2020年12月10日、観察者網は、日本企業が中国から大規模な撤退を始めているとの情報が誤りであるとする記事を掲載した。
記事は、日本政府が今年4月に国内の脆弱(ぜいじゃく)なサプライチェーンを改善すべく、中国の生産拠点を本国に戻す、あるいは東南アジアなどに移転しようとする企業に対して総額2435億円の支援する予算を組み、これに1757社が手を挙げたと紹介。そのリストを見ると、政府から補助金を得て生産拠点を中国から移転する企業の多くはマスク、遺伝子検査試薬、アルコール消毒剤などの衛生用品メーカーで、自動車製造や金融業、貿易業に関する企業は見られなかったと伝えた。
そして、中国商務部が10日に行った定例記者会見で、同部の高峰(ガオ・フォン)報道官が「日本企業による大規模な中国撤退」論はそもそも成り立たないとの見解を示し、その証拠として日本貿易振興機構(ジェトロ)が今年4月に華南地域の日本企業およそ3500社に対して実施した調査で、91.7%が中国業務を他国へ移転する計画はないと回答したことを挙げたと紹介している。
また、日本企業が中国からの撤退を考えていないだけでなく、日本の高学歴人材の中国流入も加速しているとし、2017年現在で中国に居住している日本の研究者数が約8000人に達し、1か月以内の短期滞在による訪中日本人研究者の数も18年現在で1万8460人と14年に比べて25%増加したことを伝えた。
記事は、日本における研究者の社会的地位が低く、得られる報酬も中国に比べて少ないことが、日本人研究者の中国流入を加速させていると考察した上で「総じて日本の企業も人材も、中国市場を重視している。そして今後、中国市場の重要性はさらに際立つことだろう」と結んでいる。