24時間営業は、日本で規模最大の有名コンビニエンスストアブランド「セブンイレブン」がこれまでずっと維持してきた営業モデルで、他の小売業態に比べてコンビニがもつ最大の優位性であり特徴でもある。しかし人手不足や店舗の飽和状態などが原因で、今の日本ではこうした人手に頼った経営モデルを続することがだんだん難しくなっている。そこでセブンは目下、24時間営業の原則を守り続けるかどうかを検討中だ。中国商報が伝えた。
日本の東レ経済研究所の永井知美研究員は、「コンビニの24時間営業モデルは巨額の収益をもたらすが、深刻な労働者不足によりこのモデルは維持できるかどうかの瀬戸際に立たされている。営業時間と収益とのバランスをどう取るのかが、コンビニ産業がこれから直面する最大の課題になる」と指摘した。
実際、コンビニ産業の状況は日本社会に広がる「人手不足」の縮図に過ぎない。調査機関の予想では、2030年には日本の労働者不足は644万人に達し、各業界・各産業で人手が足りなくなるとみられる。こうした局面に対処するため、日本政府は今年4月から新たなビザを打ち出し、今後5年間でのべ約35万人の外国人労働者を受け入れ、人手不足を補い、社会の正常な運営を維持するとしている。
■日本のコンビニは数々の困難に直面
報道によると、セブン以外の日本のコンビニ大手も似たような状況にある。全体としては24時間営業を保証できるが、一部の加盟店から人手不足のため営業時間を短縮したいとする報告がたびたび上がるという。
高齢化と人口減少がもたらす社会問題が日本のコンビニの直面する困難だ。人を雇おうにも集まらず、加盟店のオーナーでさえ持ちこたえられるとは限らない。セブンを筆頭とする日本のコンビニにとって、24時間営業モデルを続けるのも、新たなモデルを探すのも、どちらも難しい問題だ。
英誌「エコノミスト」は日本のコンビニが直面する「内憂外患」を指摘した。
第1に、同業者との競争が激しい。店舗数がほとんど飽和状態にありながら、大手3社は店舗拡張の歩みを止めず、それぞれの戦略が異なるだけだ。セブンは地域密集型の店舗配置を行い、ファミリーマートは合併買収(M&A)を通じて拡張をはかり、ローソンは日本で初めて47都道府県すべてに出店した。現在、この3社で日本国内シェアの90%以上を占める。しかし人口がマイナス成長する一方で、新店舗を次々オープンさせているため、店舗あたりの売り上げは前年同期に比べて減少した。
第2に、ECとコンビニが「ラストワンマイル」を激しく争う。現在、コンビニの主力商品である缶飲料をめぐってはそれほど多くの競争者が存在しないが、利便性をめぐってはすでにライバルが登場している。消費者はモバイル端末を使って商品を注文できるようになり、コンビニに行くよりも便利に買い物ができる可能性が広がった。また、コンビニは現時点では「ラストワンマイル」の役割を担い、消費者はコンビニで宅配を受け取れるが、よくみれば全国の宅配量の5%をまかなうに過ぎない。物流産業が宅配ボックスをさまざまな場所に設置するようになれば、消費者は近所のボックスで荷物を受け取るようになり、コンビニのサービス機能に間接的な影響が出ると予想される。
第3に、ドラッグストアがシルバー市場を奪いつつある。超高齢化社会ではますます多くの高齢者がより便利な医薬品受取サービスを必要とするようになることを見越して、多くの小売業界が小規模なドラッグストアチェーンに次々出資し、小売店舗とドラッグストアが融合した店舗を展開している。しかし同じビジネスチャンスを見据えて、ドラッグストア大手も都市部を出て、郊外へも進出し、薬剤師の訪問サービスを提供するほか、店舗では時に小売店舗よりも安く日用品や食品を販売する。このような流れの中、コンビニの市場シェアはさらに奪われることになる。
■AIが特効薬になるか
日本セブンイレブンの親会社であるセブン&アイ・ホールディングスの井坂隆一社長は4月初めに、「セブンイレブンは今年は『店舗オープン』から『既存店の強化』に重心を移す」と発言。計画によると今年の新規店舗開設数は850店にとどまり、昨年より500店舗減少と大幅に減るという。また既存店舗への投資を増やし、セルフレジ技術を発展させるという。
店舗開設数を思い切って減らし、セルフレジ技術に投資し発展をはかっても、ファミリーマートやローソンに比べて、セブンは人工知能(AI)に関して明らかに後れを取っている。
4月2日には、ファミマとパナソニックが提携して「次世代型コンビニ」を打ち出した。このスマートコンビニにはモノのインターネット(IoT)技術とAI技術が大量に採用され、これには価格を自動変換できる電子タグ、顔認証による決済など人手を節約した低コストの各種自動化技術が含まれる。
日本のコンビニでは自動化技術に最も積極的なローソンは、16年という早い時期にパナソニックと提携し、セルフレジ機能を採用したスマートコンビニ技術を試行し、無人店舗の目標に向かって一歩ずつ進んできた。昨年10月に行われたエレクトロニクス分野の国際展示会CEATEC JAPAN2018では、バーチャル店員による接客、RFID技術(近距離で無線通信により情報をやりとりする技術)によるセルフレジの実現、餃子を製造できるアーム型ロボットなどの技術を展示。計画では今年7月より、一部の店舗で深夜の時間帯にこうした技術のテストを行い、人手不足と長時間労働の改善を目指すという。
しかしセルフレジ技術を発展させればすべてが丸く収まるわけではない。分析によれば、セルフレジ一つとっても、消費者に向けて生み出される価値は実際には非常に限定的であり、コストも人件費より安いとは限らない。規模の非常に大きな、来店者も非常に多い店舗に技術を応用してこそ、レジ時間を大幅に短縮し、技術本来の価値を発揮させることが可能になるという。
こうした技術を街角にあるこじんまりしたコンビニに応用しても、コスト低下にならないどころか、新技術の大量導入によってコストはかえって上昇する。おまけに、無人コンビニは店員が不要なわけではなく、商品棚を整えたり商品を補充したりするのにやはり人手は必要であり、レジに人がいないだけだ。消費者にとってみれば、レジがセルフ方式になる以外、消費体験は全体としてそれほど大きく変わらない。
セルフレジのモデルは小売業界のコストを下げずに上昇させ、消費者の体験も大幅に改善するわけではないというなら、「この未来の小売業界のトレンドの1つと言われる技術は、結局どこに応用すればいいのか」とたずねたくなるのも無理はない。