太陽光発電で瞬間的に増加した電力を蓄え、日射量が少ないときに蓄えた電力を出し、不安定な電力の平滑化を行うことを可能にする「次世代フライホイール蓄電システム」の実証試験施設が、甲府市下向山町の米倉山太陽光発電所に出来上がり、完成式とシステムの起動式が3日、現地で関係者が集まり行われた。県が新たに建設した太陽光発電施設を使い、システムとの系統試験を今年度末まで行う。再生可能エネルギーによる電力平滑化が確実になると、鉄道を太陽光発電で走らせるという可能性も見えてくる。
実証試験を行うのは、財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)、クボテック、古河電気工業、ミラプロ、県の5者。新エネルギー・産業技術総合開発機構の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」プロジェクトに位置付けられている。
関係者の説明によると、フライホイール蓄電システムは電力を回転エネルギーに変換して蓄える方法。技術は約20年前に開発されていたが、日照量により高低が生じる大容量発電への対応が難しいとされていた。
「次世代…システム」は真空状態の中で太陽光エネルギーを高速で回転する円盤型のフライホイールに蓄える方法が使われている。外径2メートル、厚さ10センチの炭素繊維製フライホイールを9層に重ね、重さは約4トンある。フライホイールは「より重く」「より高速で回転する」と大きなエネルギーを蓄えることが可能とされ、蓄電容量を大きくするためには高速回転が求められる。このためフライホイールの底部には超電導磁石が使われ、磁石の反発力を生かしてフライホイールを浮かせ回転させる。回転速度は時速2千キロに相当するという。試験施設では蓄えたエネルギーを電力に変換することで、最大300キロワットの出力変動に対応できるとしている。
現地で行われた完成式で後藤斎知事は「本県は日照時間が長く、再生可能エネルギー活用を推進している。だが大容量の太陽光や風力発電は安定供給技術が必要」と、システム実証試験の意義を述べた。また鉄道総研の熊谷則道理事長は「蓄電研究を進める中で再生可能エネルギーを組み合わせたシステムづくりを山梨県と一緒に行うことになった」と経緯を説明したうえで、「超電導技術を組み入れた蓄電システムを在来線鉄道に利用することを研究している。鉄道沿線にシステムを配置すると効率がいい鉄道ができる」と話し、実証試験を通じてシステムのコスト削減も研究する方針を示した。