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1億円以上の資産家対象の「出国税」スタート、海外移住による「課税逃れ」を防げる?

お金持ちの人は、日本から出ていくときに税金を払ってください――。富裕層の課税逃れを防ぐ出国時課税制度、いわゆる「出国税」が7月からスタートした。

近年、節税・相続対策のため、所得税の税率が低いシンガポール、香港、スイスなどへの移住を考える資産家は少なくない。こうした動きを背景に、保有株式の含み益に所得税を課す「出国税」が導入された。

1億円以上の金融資産を持ち、直近10年のうち5年以上日本に居住していた人が、海外移住する際に対象になる。5年以内に帰国した場合は、課税が取り消される。「出国税」の導入にどんな意味があるのか。李顕史税理士に聞いた。

●富裕層の「節税スキーム」を防ぐ

「今回のいわゆる出国税とは、海外に移住して財産を移転してしまうことを防ぐのが目的です」

李税理士はこのように述べる。どういうことだろうか。

「たとえば、海外に財産を持って移住して、移住先で財産を売却したとします。この場合、個人であれば、売却益に所得税がかかることになります。

しかし、日本国民といえども、日本に居住していなければ、日本の所得税は払わなくてすみます。つまり、所得税の低い国に移住して、売却すれば節税できるのです。この節税スキームを防ぐために、今回の出国税が創設されました」

今回の施策は妥当なのだろうか。

「国としてみれば、日本国内で財産を構築した人が海外に移住したからといって、税金だけ日本に入ってこないのでは、たまったものではありません。

また、誰もが出国税を課されるわけではありません。主な条件として、財産総額(資産総額)1億円以上の人が対象です。1億円の財産を持っている人はそうはいないでしょう。

このように、税金を徴収する必要性があり、また、その範囲が限定的で、許容性もあるといえます。ですから、国が今回の出国税を創設したことは、一定の合理性があると思います」

●節税したい側と、国側の知恵比べが続いている

「かつては、米国と日本の贈与税の違いに着目して、節税を考えた人がいました。日本の贈与税は受け手(もらい手)が払います。米国では、払い手が贈与税を払います。

なので、簡単にいうと、日本居住の親が米国留学中の子供に米国債を贈与してしまうのです。しかし、この方法は法律改正によりできなくなりました。

このように節税しようとする側と国側の知恵比べが長年続いています。これは日本だけではなく、諸外国でも同じようです」