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刺繍釈迦三尊像など3件を山梨県有形文化財に指定

 県教育委員会は有形文化財として、彫刻部門で「木造不動明王及(および)二童子(にどうじ)像」3点(甲州市・恵林寺所有)と工芸品部門で「不動明王像御正体(みしょうたい)」1点(富士吉田市歴史民俗博物館収蔵)、「刺繍(ししゅう)釈迦(しゃか)三尊(さんぞん)像」1点(身延町・身延山久遠寺所有)の3件を指定した。このうち刺繍釈迦三尊像は鎌倉時代末期の繍仏(しゅうぶつ)工芸とみられ、釈迦を主尊とする遺例は京都府の真正(しんしょう)極楽寺の「刺繍釈迦三尊来迎(らいごう)図」(重要文化財)と並び、極めて希少とされる。

 刺繍釈迦三尊像は筆で仏画を描くようにひと刺しずつ縫い表した繍仏。本紙の大きさは縦79・5センチ、横40・5センチ。形状は掛け幅装、絹本(けんぽん)刺繍。釈迦如来を中尊として、左右に侍者(じししゃ)を従えた乗象(じょうぞう)普賢(ふげん)菩薩、騎獅(きし)文殊(もんじゅ)菩薩を刺繍で表した。

 県学術文化財課によると、繍仏が盛行するのは鎌倉時代に入ってからだが、多くは浄土教信仰に基づく阿弥陀三尊来迎図であり、釈迦を主尊とした例は少ない。作者は不明だが、多彩な色糸を使い、華麗な色感、多様で緻密な繍技を酷使して、着色画に劣らぬ量感ある表現に優れている。また退色・劣化しやすい刺繍としては保存状態が極めてよく、中世繍仏の優品として貴重としている。刺繍釈迦三尊像は昨秋、身延山宝物館で約1カ月間公開されたが、今後の公開予定はいまのところない。

 木造不動明王及二童子像は不動明王像(像高92・9センチ)を中央に、右に矜羯羅(こんがら)童子像(同87・7センチ)、左に制多迦(せいたか)童子像(同87・2センチ)を配置。不動明王像は座像ながら上半身を左にひねり、右肘を大きく外に張り、力のこもった表情をみせる。室町時代末期の作とみられ、武田信玄が願主となって造立し、ぼだい寺の恵林寺に納め、姿は信玄を写したと伝えられる。不動明王像御正体は昭和60年に富士山吉田口7・5合目の元祖室付近の登拝道整備工事の際に発見された鋳銅製の円形鏡板。中央に不動明王座像が配置されている。鏡板直径は31・6センチ。室町時代の作。富士山信仰圏の展開実態を知るうえで重要な史料。