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【山梨この1年】夢のリニア500キロの世界体感

 今年も残すところ、あとわずかとなった。甲信越地方もさまざまな出来事があった平成26年を、きょうから3回で振り返る。山梨県では、衆院解散を受け今月行われた総選挙で、全国的には圧勝した自民党が選挙区議席を失う敗北を喫した。2月の大雪では、交通・流通網がまひし、孤立集落も出た。リニア中央新幹線の着工認可に伴い甲府市にJR東海の工事事務所が設置され、今月には起点となる東京と名古屋で着工。山梨を舞台としたNHK朝ドラ「花子とアン」が高視聴率を記録し、県内も“花子ブーム”に沸いた。来年は年明け早々に県知事選と甲府市長選、そして4月には統一地方選が実施される。平成27年はどんな一年になるだろう。

 ◆リニア着工

 JR東海が東京・品川-名古屋間で平成39年の先行開業を目指すリニア中央新幹線の工事実施計画が10月、国土交通相から認可された。

 県内では、JR東海が甲府市に「山梨工事事務所」を開設。今月17日には、品川、名古屋の両ターミナル駅予定地で建設工事に着手した。

 県内ルート延長は83.4キロで、地上区間27.1キロの大半で用地取得が必要となる。県はJR東海と協定を結び、用地交渉業務を受託。今年度から33年度までの8年間で予定ルートの用地取得を目指す。

 都留市の県立リニア実験センターには今年4月、山梨リニア実験線を疾走する営業仕様の新型車両を間近に見学できる新館「どきどきリニア館」が開館。リニア実験線は9月に報道陣向けの走行試乗会を実施。11、12月に一般向けの走行試乗会が行われ、抽選で選ばれた参加者が一足早く時速500キロの世界を体感した。

 ◆花子ブーム

 3~9月に放映されたNHK連続テレビ小説「花子とアン」は、名作「赤毛のアン」を日本に初めて紹介した甲府市出身の翻訳家、村岡花子が主人公となり、県内も舞台やロケ地となった。視聴率は全話平均22.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、過去10年の朝ドラで最高視聴率を記録した。

 県内では、花子にちなんだ催しなどが企画され、県民や県外からの観光客でにぎわった。県立文学館の「村岡花子展」(4月12日~6月29日)は期間中の観覧者数が延べ3万4844人に上り、1日当たりの観覧者数505人は歴代企画展で最多となった。

 花子らが通う教会としてドラマに登場した韮崎市指定文化財「韮崎宿豪商の蔵座敷」には前年の20倍を超える見学者が来訪。蔵座敷の隣接地には、花子の生家として使われたロケセットが甲府市から移設され、新たな観光施設となっている。ドラマは、甲州弁を全国に広める効果もあった。「こぴっと(しっかりと)」は「2014ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた。

 ◆記録的な大雪被害

 関東甲信や東北の各地方は2月、記録的な大雪に見舞われた。県内も「想定外」の降雪量により、交通網がまひし、早川町などが孤立した。県は、昭和58年の台風被害時以来31年ぶりとなる災害対策本部を設置。早川町などに災害救助法が適用された。

 JR中央線や国道20号など多くの道路では、列車や車が立ち往生した。甲州市勝沼町のブドウ農家で栽培用ビニールハウスが雪の重みで倒壊するなど農業被害も深刻となった。県は、災害対策本部設置の遅れが指摘されたことを踏まえ、防災対策の基本指針「県地域防災計画」を東日本大震災に伴う平成23年の修正以来3年ぶりに改定。災害の種別ごとに対策本部の設置基準を明記し、災害が発生する恐れのある段階で「災害警戒本部」を新たに設けるとした。

 ◆知事、甲府市長が引退表明

 横内正明知事(72)と甲府市の宮島雅展市長(69)が、相次いで今期限りでの引退を表明した。

 横内知事は8月の臨時県議会本会議で「激務の知事職を続けるには、体力の限界を感じる。今期をもって引退し、次期知事選には出馬しない」と3選不出馬を表明。来年2月16日で任期満了となる横内知事は、最後の定例議会となった12月県議会で「各分野で成果を挙げ、山梨発展の芽を育てることができた」と県政実績を総括した。

 宮島市長は9月定例市議会で「3期目をもって節目とし、市長の職を退くことを決断した。甲府市をさらなる飛躍へと導くためには、新市長に託すときを迎えた」と4選不出馬を明らかにした。

 知事選は来年1月8日、甲府市長選は同18日にそれぞれ告示され、投開票は同日の25日に行われる。

 ◆新区割りで衆院選

 今月の衆院選で、県内から5人の衆院議員が誕生した。衆院小選挙区定数の「0増5減」に伴い、県内選挙区は1減され、新たな2選挙区で初めて実施された。

 1区は公示直前に解党したみんなから民主入りした前職、2区は無所属前職がそれぞれ当選。各選挙区に立った自民前職2人は、比例代表で復活当選。比例代表に回った自民前職1人も当選した。自民は国政での「1強」の勢いに乗り議席の独占を狙った選挙区で議席を失った。来年1月の知事選と甲府市長選への対応も含め党県連の弱体化が露呈している。

 ◆富士山入山料本格徴収

 世界文化遺産である富士山の保全費用を捻出するため、山梨、静岡両県は今夏から、登山者に1人1000円の負担を任意で求める「保全協力金(入山料)」を本格的に導入した。しかし、徴収成果は両県で計約1億5800万円にとどまり、計2億7900万円とした試算を大幅に下回る低調に終わった。

 徴収額の両県の内訳は山梨が約1億1400万円、静岡が約4400万円、協力した登山者の割合は山梨で56%、静岡で41%だった。山梨県だけでみても「80%の協力で2億円が集まる」とした県の当初の想定を大きく下回り、試験徴収した昨年の協力率68%にも届かなかった。

 外国人登山客や団体ツアー客からの徴収が伸びなかったことに加え、悪天候やマイカー規制で7、8月の登山者数が昨年と比べて2割ほど減り、登山客自体が少なかったことが、低調の主な要因とみられる。

 両県は来夏に向け、徴収方法の見直しを検討している。

 ◆御嶽山噴火

 御嶽山(長野・岐阜県、3067メートル)が9月27日、噴火した。登山者ら57人が死亡、6人が行方不明となり、県内関係者も被害に遭った。

 亡くなったのは、上野原市の市職員、宮地(みやち)昭さん=当時(58)=と、妻で市立島田保育所所長のよし子さん=同(56)。甲斐市の会社員、猪岡洋海(いのおか・ひろみ)さん=同(42)。今年の捜索活動は降雪などによる二次災害の危険があるため10月16日に打ち切られ、猪岡さんの夫、哲也さん(45)は行方不明のままとなっている。

 戦後最悪の火山災害となった御嶽山の噴火を受け、富士山の噴火の可能性に関心が高まった。県や富士吉田市など関係する自治体では、登山者や観光客、麓の住民らの安全を守る防災策の構築に乗り出している。

 ◆エコパークに南アルプス登録

 北岳など3000メートル級の山が連なり、森林保全や農産物のブランド化、エコツアーなどが盛んな「南アルプス」が6月、自然保護と活用の両立を目指す国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に新規登録された。「(昨年6月の)富士山の世界文化遺産登録に続く朗報」(横内正明知事)と県内も喜びにわいた。

 対象となったのは、山梨、長野、静岡3県10市町村の30万2474ヘクタール。高い山々に阻まれ過去には交流が活発でなかった関係地域は、共同で自然環境と伝統文化を生かした魅力ある地域づくりを目指す。県も支援を約束した。