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富士山登山者上限目標先送り 世界文化遺産学術委が合意

富士山の環境保全などについて有識者が協議する「富士山世界文化遺産学術委員会」が26日、東京都内で開かれ、山梨、静岡両県は、年内の設定を目指していた各登山道の1日当たりの登山者数の上限目標設定について、平成29年度まで先送りすることで合意した。また、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産センターへ提出する「保全状況報告書」に盛り込む噴火対策などの各種戦略案が了承された。来月の富士山世界文化遺産協議会で採択される。

 登山者数の上限目標設定をめぐっては、週末やお盆期間中の混雑解消に向けて、山梨、静岡両県が1日当たりの登山者数の上限目標を試算することを今年9月の学術委員会で提案。しかし、その後に開かれた地元関係者会議で、観光業への影響を危惧した山梨県関係者を中心に反対意見が相次ぎ、上限設定に前向きな静岡県との違いが浮き彫りになっていた。

 山梨県知事政策局の市川満理事は先送りした理由について、「われわれの説明が不十分だったことも大きな要因で、地元関係者にご理解いただけなかった」と釈明し、「時間を要する問題なので慎重にやっていきたい」と述べた。

 両県は来夏から3年間、登山者の動態調査や意識調査を実施して、30年の夏までに、登山者数の上限目標を設定したい考えだ。

 また、御嶽山(長野、岐阜両県)の噴火を受けて、危機管理戦略案に「登山者への情報伝達及び避難施設の在り方並びに登山者への事前の啓発活動等の検討を進めている」との文言を新たに追加し、突発的な噴火に対応していくことを明記した。

 富士山の噴火対策について、筑波大大学院の吉田正人教授は「長野県では登山計画書の提出を義務づける動きがあるが、富士山でも義務付けることはできないのか。スマートフォンのアプリなどを使って最低限の情報を入力、送信してもらえれば危機管理、来訪者管理の両面で対策が立てやすくなるのではないか」と発言。山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長は「小規模な噴火の場合は事前に分からない可能性があるので、登山者への情報伝達の仕組みを準備しておいた方がいい」と述べた。

 今回の学術委員会で了承された各種戦略案は、委員の意見を基に両県の事務局が調整し、来月開催の富士山世界文化遺産協議会で富士山ビジョン案とともに採択される見通した。

 静岡県富士山世界遺産課の小坂寿男課長は「ようやく第1段階が終わったが、作業はまだまだ残っている。今後も関係者としっかりと話し合い、いい報告書を作っていきたい」と話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141127-00000037-san-l19