無料相談受付中

【甲信越ある記】山梨「河口湖円形ホール」 客席に伝わる息づかい

紅葉が盛りの河口湖畔(山梨県富士河口湖町)沿いを観光客が歩いていると、屋根に明かり取りの小屋根を設けたしゃれた建築物に気付く。ご婦人グループが「どなたかの別荘かしら」。庭にはモニュメントや椅子があり、「レストランかも」とも話す。

 正解をお伝えすると「河口湖円形ホール」。小規模なコンサートホールだ。東京から町に移り住んだファッションデザイナーが「若い芸術家を育てたい」と自らデザインし、完成後の平成6年、町に寄贈した。木造建築でホールは吹き抜け、一部2階建て。客席は100人も座るといっぱいになる。小規模とはいえ、内装の壁、天上は音の自然な響きを考えて設計された流線型構造。木質空間がアコースティックコンサートの魅力を高める。客席と舞台がフラットな位置にあるのも特徴だ。

 今月8日に舞台女優で朗読家の伊藤ひろこさんとピアニストの川井綾子さんによる「ピアノと朗読で綴(つづ)る作曲家物語」として「ベートーヴェン-苦悩によって磨かれた魂-」が開かれた。伊藤さん自身がベートーベンの半生について台本を書き上げ朗読した。伊藤さんの息づかい、川井さんの譜面をめくる音さえ伝わる至近感がいい。

 この前週には2日間ジャズコンサートも開かれた。若い演奏家たちには最高の舞台だったが、同ホールを運営する河口湖ステラシアター関係者は「21日には元ウィーンフィルメンバーでヨーロッパで活動するトーマス・ヴィンクラットの本格バイオリンリサイタルが予定されています」と説明する。名手の息づかいを感じ取ることができる演奏会は河口湖円形ホールならではの格別な余韻を聴く者に残してくれるはずだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141116-00000002-san-l19