エジプトのスエズ運河管理局は29日にコミュニケを発表し、スエズ運河で座礁したコンテナ船が完全に離礁して運航が正常化したことを明らかにした。業界関係者は、「グローバルサプライチェーンは物流が停滞したことによる後続の影響を消化するのになお数週間を必要とするだろう」との見方を示した。
スエズ運河は欧州、アジア、アフリカの3大陸を結ぶ要衝で、紅海と地中海につながっている。1869年に開通し、3大陸の貿易の重要なターミナルで、世界の水上輸送ルートの中でもトップクラスの利用状況だ。今回の「大渋滞」は、スエズ運河史上で最も深刻なコンテナ船座礁による航路遮断事故とされている。
救援の時間が1分1秒と過ぎるのにともない、立ち往生する船がどんどん増え、経済的なコストもどんどん積み上がり、グローバルサプライチェーンは「魚の骨がノドに刺さった状態」になった。
食品の中には期限が来てしまったものがあるかもしれない。パルプの供給が遮断され、トイレットペーパーなどの日用品が供給不足になり、新型コロナウイルス感染症の期間中に買いだめをした欧米諸国の人々には、あの不安な感じが再び訪れるかもしれない。コーヒーを積んだ船が足止めされて、コーヒーがすぐに飲めなくなるかもしれない。予約購入したイタリアの高級バイクの引き渡しが遅れる人もいるだろう。綿羊を積んだ貨物船が足止めされ、生態環境上のリスクを引き起こすかもしれない。シリアへ運ばれる燃料が遅れる可能性もある。米国が近くの海域で展開する軍艦の活動も影響を受けるかもしれない。
試算によると、現在、世界の貿易の12%前後はスエズ運河を通過し、毎日南北を双方向に通過する貨物の総額は約100億ドル(約1兆1024億円)に達し、通航が1時間遮断されるごとに4億ドル(約441億円)前後の損失が出るという。一方で、スエズ運河の所有者であるエジプトが徴収する運河通行料は、同国にとって3番目の外貨収入源になっている。今回座礁した日本船籍コンテナ船を所有する正栄汽船は、1億ドルに上る損害賠償に直面する可能性もある。
今回の事故は、グローバル化の時代におけるバタフライ効果の微妙さを明らかにした。
データの試算によると、運河の収入は1日遮断するごとに1400万ドルから1500万ドル減少する。ドイツの大手保険会社のアリアンツの試算では、グローバル貿易に1週間あたり60億ドルから100億ドルの損害を与えるという。
国際海運連盟のガイ・プラテン事務局長は、「一部の海運会社はコンテナ船の航路を変更し、アフリカの喜望峰を迂回させている。これは、関連の船の海上輸送距離が3500マイル、輸送時間が12日間、それぞれ長くなることを意味する」と話した。
世界最大の海運会社であるデンマークのA.P.モラー・マースクの情報によると、これまでにコンテナ船15隻が喜望峰の迂回ルートを取るようにし、そのために生じる損失は避けられないという。
英国放送協会(BBC)は、「本当の損失とコストは船舶が離礁して、貿易が回復するまで評価が難しい。今言えるのは、グローバル海運業とエジプト経済に影響するだけでなく、多くの国の輸送サービスのサプライヤーから小売企業、スーパー、製造業企業まで、多くの企業がすでにさまざまなレベルの影響を被り、金銭的に巨額の損失を出しただけでなく、その他の目に見えない損失もあったことだ」と指摘した。