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<直言!日本と世界の未来>若い世代の斬新な発想に感動=懸賞小論文コンクール入選作を読んで―立石信雄オムロン元会長 立石信雄

「SAM日本チャプター第3回立石信雄懸賞小論文コンクール」の結果が発表され、表彰式が開催された。このコンクールは次世代を担う若い人たちの人材育成に積極的に取り組み、「よりよい社会づくり」の実現に貢献できればとの思いから、2016年から始めた。このコンクールには多くの応募があり、若い世代が企業経営の在り方を考える機会としてすっかり定着したことをうれしく思う。 

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SAMはSociety・for・Advancement・of・Managementの略で、「科学的管理法の父」と呼ばれるF・W・テイラーの独創的な原理を普及するために1912年に米国で設立された「テイラー協会」を源流とする世界で最も由緒あるマネジメント研究団体である。米国内と世界の各地に200を超えるチャプターと称する組織を運営している。SAM日本チャプターは初めての海外チャプターとして1925年に設立され、現在は東京、大阪、名古屋に支部を置き、毎年全国で40回を超える例会(研究会)を開催している。私はSAM日本チャプターの名誉会長を務めている。 

今回も様々な課題に直面している企業の経営の在り方についての論文を募集。30歳未満の大学生、大学院生、社会人が対象で今年は全国から前回(103人)を上回る116人の応募があった。長山宗広駒澤大学経済学部教授ら19人で構成される審査委員会(蛭田克美委員長)による1次、2次審査によって、立石信雄賞(最優秀賞)「人生100年時代に~後継者という働き方の提案」(日本大学商学部・山中舜さん)、SAM日本チャプター会長賞「文化的、心理的分析に基づく、インド進出日系企業への問題解決サポートビジネス」(セルム中部支社・Sharma・Arum・Kumar)など8作品が入賞した。 

私は挨拶文の中で、次のように呼び掛けた。 

「第3回立石信雄懸賞小論文コンクール」に応募をして下さった若い世代の方々に厚くお礼を申し上げます。SAM会員と大学の先生方による選考委員会の厳正なる審査の結果、受賞された皆様には心からお祝いを申し上げます。 

今回は「私か創業するとしたら、こんな企業や組織をつくる」というテーマで募集をしたところ、過去2回を上回る応募を頂き、若い世代からは様々な「提案」が寄せられました。その多くが現代の日本社会が抱えている問題に着目し、それをどう解決していくかを考察して発案されていました。 

応募作品の中には、社会における弱者に配慮して着想された事業もあり、他人を思いやる心や優しさが基調となったビジネスを発想されたことをとても嬉しく思いました。 

オムロンの創業者で私の父、立石一真は「最もよく人を幸福にする人が最もよく幸福となる」という言葉を残しています。人は誰でも幸福になる権利があるが、人を押しのけたり、足を引つ張ったりして自分だけ幸福になろうとしても決して幸福にはなれないということです。この言葉は、企業は事業利益のみを追求するのではなく、社会の公器として「よりよい社会をつくりましょう」というオムロンの経営理念にもなっています。 

よりよい社会とは全ての人が幸福に暮らせることです。 

グローバル化やIT(情報技術)革命など、企業を取り巻く環境は大きく変化し、人々のライフスタイルも経済的な豊かさだけでなく、精神的な充足や生きがいを求められるようになってきました。企業は従業員の家庭生活に配慮した職場環境を与えることが重要となってきています。若い世代は、仕事と個々の生活をバランスよく両立させて、ボランティアのような社会的活動にも積極的に参加されることを強く願っています。 

今後もSAM日本チャプターの活動が、次世代のよりよい社会づくりの実現に貢献できれば幸いです――。 

116点の論文を読んでつくづく感じたのは若い世代の発想が多彩だったこと。特に「立石信雄賞」受賞の「人生100年時代に~後継者という働き方の提案」は、「人生100年時代」において、長く働ける経営者は“長すぎる老後”に備える魅力的な選択肢になる」と提唱しており、発想がユニークである。「60歳から定年後の40年をどう過ごすかを考えた時、『いくらもらえるのか』と同時に『何歳まで働けるか』かが重要になってくる」と指摘。人口減少と長寿社会と今日的な課題に目配りしている点に感心した。 

若い世代のさらなる創意を求めて、今後もこのコンクールを続けたいと考えている。