2019年1月18日、中国メディアの観察者網は、日立製作所が英国で進めていた原子力発電所の建設計画の凍結を発表したことを受けて、「今後は中国企業が英国での原発建設を加速させ、日本企業の『退場』により生まれた空白を埋めるだろう」と伝えている。
毎日新聞は、英国での原発建設計画について「安全対策費の増加などから総事業費が当初想定を大幅に上回る3兆円規模に拡大。英政府が2兆円超を融資し、残る9000億円については、日本の政府・企業、英政府・企業が3000億円ずつを、日立が残りの3000億円を負担することを想定していた」と報道。しかし、「採算性の確保が見通しづらいことなどを背景に、当初、パートナーと期待していた東京電力ホールディングスなど国内民間企業からの出資集めが難航した」と伝えている。
日立が17日に開いた記者会見で、東原敏昭社長は計画凍結の理由について「英国政府から追加出資の意思が示されなかった」「予算が限界に達していた」などと説明。日立はこれまで資産として計上していた原子炉などの開発費が価値を生まなくなったとして、約3000億円を損失として計上。毎日新聞は「安倍政権がインフラ輸出の柱に掲げてきた『日の丸原発輸出』の頓挫が鮮明になる」と報じている。
記事は、「2011年に福島第一原発で起きた事故の後、日本国内では新たな原発の建設が難しいなか、海外での受注を通して原発関連産業の技術力を維持する狙いがあった。しかし2016年以降、日本企業の原発に関わる『喜ばしくないニュース』が続いている」と報道。三菱重工はトルコの原発建設計画から建設費の高騰を理由に撤退し、東芝も英国の原発建設事業から撤退。今回、日立が英国での原発建設計画を凍結させたことで、日本国内の原発輸出プロジェクトは「ゼロになった」と伝えた。
記事は、英ロイター通信による報道を引用し「今後は中国企業の中国広核集団有限公司が日本企業の『撤退』により生まれた穴を埋めていくだろう」と伝えている。2015年10月以降、同社はフランス電力公社と英国政府で3カ所の原子力発電所建設プロジェクトの契約に署名した。これにはヒンクリー・ポイントCプロジェクト、サイズウェルCプロジェクト、ブラッドウェルBプロジェクトが含まれる。ブラッドウェルBプロジェクトでは中国自主開発の第三世代原発技術「華竜1号」を採用することが予定されており、本プロジェクトの開発・建設は中国広核集団有限公司が主導し、フランス電力公社が協力するとしている。
英紙ガーディアンによれば、日立と東芝の撤退により生まれた「原発プロジェクトの空白」は英国エネルギー需要の15%を占めるという。