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アップル株下落 高価格iPhoneが足引っ張る

ドイツの経済学者アンドリュー・ローレンスが提起した「摩天楼の呪い」のように、1兆ドルの時価総額達成は衰退と背中合わせのようで、アマゾンはこの「呪い」から逃れられなかったし、アップルもその後塵を拝した。記録的な業績に続くのは、下がり続ける時価総額だ。アップルが今月2日に発表した最新の決算によると、株価が低迷し続けており、米国東部標準時の5日には累計10%低下し、時価総額は9733億900万ドル(1ドルは約113.2円)まで落ち込んだ。これと呼応するように、新製品が不調で、生産台数をカットするとのうわさも飛び交う。そしてアップルの絶対的な地位の揺らぎを懸念する声が、あちらこちらから聞こえてくる。「北京商報」が伝えた。 

▽ついに天井か? 

営業収入は629億ドルで前年同期比20%増加、純利益は141億2500万ドルで同32%増加。このウォール街のアナリストの予測を上回る好調な第4四半期の業績も、アップルの苦境を覆い隠すことはできなかった。2日に決算が発表された後、アップル株は2営業日連続で低下し、5日には一時的に200ドルを割り込み、時価総額は2日に700億ドル目減りしたのに続き、さらに435億ドル目減りし、1兆ドルの王座から転げ落ちた。 

これは圧倒的な人気製品がなくなったことが原因だ。決算によると、第4四半期のiPhone(アイフォーン)の販売量は4688万9千台で、前年同期と変わらない水準だったが、市場の平均的予測は下回った。iPad(アイパッド)は969万9千台で同6%減少、Mac(マック)は529万9千台で同2%減少だった。 

生産量と出荷量の不調は問題の一部分に過ぎない。市場をより恐れさせるのは、アップルが電話会議で言及したように、19年度からは製品全体とサービス全体に対して営業収入と販売コストを報告することとし、iPhone、iPad、Macのそれぞれ個別の販売データは公表しなくなることだ。つまり、個別の販売量がわからなくなる。 

雨や曇り空は続くもので、新製品の販売が不調で生産台数をカットするとのうわさがしきりに聞こえてくる。日本の英字誌「日経アジアンレビュー」の報道によれば、アップルが数週間前に発売したばかりのiPhoneXR(アイフォーンテンアール)は販売量が低迷し、主要組み立てメーカーに対し生産ラインの増設計画をストップするよう要請したという。 

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストのワムジ・モハン氏は研究報告書の中で、「当行はマクロ経済環境の弱体化が(アップルに)与えるリスクをみてきた。アップルが決算を発表すると、これからさらにマイナスの側面を見ることになるのではないかとの懸念が増大した」と述べた。メリルリンチやローゼンブラット証券など各社は、アップル株の格付けを「買い」から「ニュートラル」に下方修正した。 

▽高価格があだに 

アップルがインド市場で低迷していることについて、インドの専門家は、「iPhoneは価格が前よりも高くなったが、機能や規格でとりわけ目を引くところはない。その一方でインドのアンドロイドユーザーの基盤が大幅に拡大している。原因はiPhoneの高価格化にある。iPhoneは前年同期にインド市場で90万台を売り上げたが、今年は45万台に届いていない」と述べた。 

iPhone4(アイフォーン4)からiPhoneXS(アイフォーンテンエス)に至る間に標準モデルの価格は599ドルから999ドルに上昇し、iPhoneの価格上昇傾向は争えない事実だ。今回の決算でも、iPhoneの平均販売価格は前回決算の724ドルから793ドルに上昇した。 

アップルは「利益ナンバーワン」の業界の巨人への転身に成功した。アップル元社長最高経営責任者(CEO)のジョン・スカリー氏はさきに出演したビジネス番組の中で、「(アップルの)ティム・クックCEOは株主のために価値を生み出すという面では非常にうまくやった。だが技術のイノベーションを最優先にはしないで、アップルをぜいたく品ブランドにすることに成功した。特にiPhone事業では、アップルはスマートフォン市場で15%前後のシェアしか獲得していないのに、世界中のスマートフォンの利益の約90%を占める」と述べ、ポイントをずばりと言い当てた。 

アップルの戦略を、市場はあまり評価しているようにはみえない。今年9月のiPhoneXS MAX(アイフォーンテンエス マックス)の販売量は48万台にとどまり、XSに至ってはわずか8万台で、業界の予測を下回った。史上最高価格のiPhoneとなった新製品XSシリーズは発売からわずか数日で、定価を下回った。XRとXSも生産台数カットの噂が広まり、サプライヤーの鴻海や和碩の株価もこれにともなって下落した。 

通信の専門家・項立剛氏は、「これまで4千元(1元は約16.3円)から5千元出せば標準モデルのiPhoneが買えたが、価格の全面的引き上げ後、普通の人には手が出なくなった可能性がある。サムスンや華為などはさまざまな価格帯を設けるが、アップルは引き続き高価格を維持する。1万元を超える高価格になって是非とも買わなければならない理由はなくなり、これがアップルの現在の劣勢につながったとみられる」との見方を示す。 

人工知能(AI)アシスタントのsiri、指紋認証システム、3Dタッチ、凹型の出っ張りがあるディスプレーなど、アップルはこれまでiPhoneが生み出したイノベーションにより、世界の携帯電話企業に新たなドアを開き、アップルファンに追いかけるだけの十分な理由を与えてきた。だがクックCEOが就任すると、アップルは批判を受ける「ミクロイノベーション」の時代に突入した。バッテリーの持続力向上、CPUの性能向上、またサイズの拡大、デュアルSIM・デュアルスタンバイなどさまざまな技術を導入したが、どれも見慣れたものばかりだ。イノベーションの進展が価格の上昇に追いつかないことが、iPhoneが熱心に追いかけられなくなった理由だといえる。