中国のソフト面の実力とハード面の実力がますます高まるのにともない、中国企業による日本や韓国といったアジアの先進国への投資も増加を続けている。だがこれはここ数年になって初めて現れた現象だ。現在、中国企業の対日韓投資には多くのハードルが立ちはだかり、中国企業を「色眼鏡」で見る傾向もなお存在する。桎梏から逃れ、国際的によいイメージを樹立することが、中国資本企業の国境を越えた投資におけるカギになる。国際商報が伝えた。
▽市場はまだ成熟していない
現在、国境を越えた合併買収(M&A)は国際直接投資の主要スタイルになっている。中国企業の海外進出の歩みが加速を続けるのにともなって、大規模プロジェクトや民間企業によるM&Aプロジェクトも徐々に増えている。だがプライスウォーターハウスクーパース(PwC)がこのほど発表した報告書によると、北米や欧州などの成熟した企業が今なお中国企業の海外M&Aにおける最重要の目的地だという。それでは中国の隣国である日韓はなぜ最重要の目的地にならないのだろうか。
中国現代国際関係研究院日本研究所の補助研究員も務める南開大学日本研究院の劉雲客員研究員は、「2008年のリーマン・ショック発生後、国境を越えたM&Aの規模が拡大を続け、東アジア国家の姿がしばしばみられるようになった。日本の国際協力銀行がまとめた最新の報告書によれば、M&Aは日本企業の対外投資の重要な手法になっており、この判断は中国企業にも適用できる。ここから映し出される情勢は、国境を越えた生産や資本配置がコスト誘導型から市場誘導型に転換しているということ、M&Aを通じて市場の拡大と技術の向上をより迅速に実現できるということだ」と指摘する。
劉客員研究員は、「長年にわたり、東アジアでは『稚拙な産業保護の理論』が奉じられてきた。特に日本がそうで、外資導入の条件は非常に厳しかった」との見方を示す。
また劉客員研究員は、「世界でより範囲の広い一体化プロセスが加速すると、資本の国境を越えた流動と市場やサービスとの結びつきがより緊密になり、閉じられた投資環境では経済の発展にマイナスになった。そこで日本政府も開放の重要性を認識するようになり、安倍政権も海外資本の対日投資を一貫して積極的に推進し、体制の呪縛を打ち破ろうとしてきた。民間に目を向けると、資本市場は外資による生命力の弱まった企業のM&Aを大いに歓迎し、これはリターンを求める資本の理性的な需要にも合致している。だが今でもなお、一部の保守勢力は中国を『色眼鏡』で眺め、歴史の歯車を逆回転させようとしている」と指摘する。
韓国も同じだ。中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の李天国補助研究員は取材に答える中で、「ここ数年、韓国企業は中国資本を警戒していたが、中国企業の実力が上がると、中国企業との協力を模索し始めるところが増えてきた」と指摘した。
李補助研究員によると、「不動産賃貸業、保険業、科学技術、化粧品、外食産業、映画娯楽産業、医療保険などが、ここ数年の中国企業の対韓投資における重要産業だ。こうした分野は韓国企業の優位性を反映するもので、中韓企業は今後、先端製造業や医療・美容などの産業での協力で大きな潜在力を秘めているといえる」という。
中国資本の対日M&Aは家電分野に集中しており、ソニー、パナソニック、シャープ、NECなどが対象だ。劉客員研究員は、「東アジアの西側市場をターゲットにして生産を行う産業チェーンモデルは、雁行型モデルなどと呼ばれるもので、経済の重心が東に移るにつれてこのモデルにも変化が生じている。東アジアの経済強国はより高い視点に立って経済協力を模索し、相互の投資を奨励し、一体化された市場を形成し、世界経済の発展の方向性を誘導していかなければならない」との見方を示す。
▽投資は慎重に行うべき
中国による日韓企業のM&Aにはこれを主導するさまざまな要因がある。劉客員研究員は、「まず、中国企業の対外M&Aでは『優位性比較』の原則を遵守する。ターゲットはその国の国際競争力を備えた産業だ。次に、一連の日韓企業は経営に問題があっても、ブランドはなお影響力をもっており、これも中国企業の重要なターゲットだ。さらに、日韓は危機の中で産業のバージョンアップの必要性に直面しており、日本資本は欧米の保険企業やインフラ企業などの大規模なM&Aを行うと同時に、一連の産業を淘汰する必要にも迫られている」と説明する。
東アジアの一体化された市場という観点で眺めると、東アジアの経済大国は今後の協力で非常に大きな可能性があるといえる。劉客員研究員は、「金融市場、科学技術の革新、環境保護産業、高齢者向けサービスなどに幅広い協力の可能性がある。東アジアの一体化された市場の規模は各種の革新型産業を育成するのに十分なもので、世界経済の中心にいる米国の位置づけに取って代わるものといえる。だが前提条件は、一連の国が右翼的な対立思考や冷戦時代のイデオロギーを捨て去り、憲法改正をやめ、ミサイル配備をやめ、域外国家の『使い走り』になるのをやめ、経済貿易交渉を着実に推し進め、資本やサービスや技術をめぐる国境を越えた制限を打破することだ」と指摘する。
李補助研究員は対韓投資や韓国企業のM&Aについて、「中国企業は韓国が設定する一連の産業への参入にあたっての障壁に注意しなければならない。たとえば一部の産業では海外資本の最高投資比率が制限されると同時に、最低投資規模や最低投資人数も規定されている。反独占法などの韓国の一連の法律は中国と異なっており、企業は交渉に際して注意する必要がある。産業の規制が異なるため、中国資本が韓国でM&Aを進める際には一連の問題に遭遇することになる。さらに中国企業の海外M&Aは相対的に経験不足で、自身の持つ優位性をよりよく発揮できておらず、成功したケースが少ない。だがこれから企業の海外投資が増えていくと、中韓の協力はより深いレベルで発展するものと確信する」と述べた。
劉客員研究員は次のように提起する。「中国資本企業が日本や韓国に投資する際には、現地の法律・法規を遵守し、知的財産権を尊重し、誠意をもって経営にあたらなければならない。また、現地の文化や国民感情にも注意を払う必要がある。最も重要なことは、企業の対外投資には国家間の投資協定による保護が不可欠だということで、これは東アジア諸国が早急に解決しなければならない問題だ」。
また劉客員研究員は、「発展という視点でみると、東アジアの相互投資や経済の相互浸透は必然的な流れであり、中国資本のサービス産業も徐々に日韓市場に入り込んでいる。市場規模や企業の収益をみると、中国市場が持つ吸引力は引き続き周辺諸国には真似できないものであり、発達したエコノミーでも真似できない。資本は利益を方向性とし、富をより多く生み出す市場へと自然に流れていく。よって中国への投資は他国の企業にとって最良の戦略的選択でもある」との見方を示す。