山梨県は27日、マレーシアのクアラルンプール(KL)中心部ブキビンタンの商業施設パビリオン内に、県産品販売や観光情報などを発信する常設のアンテナショップ「富士の国やまなし館KL」を開設した。日本の地方自治体としては初めての試み。現在、旬を迎えている桃、ブドウなどの果物やワインなどを販売している。
アンテナショップは、パビリオン6階の「トーキョー・ストリート」近くに位置する。店舗面積は約25平方メートル。店内では、桃、ブドウなどの果物、ジュース、ワイン、清酒のほか、ゆばやほうとうなどの加工食品も販売している。特産品販売のほか、富士山や1300年の歴史がある西山温泉などの観光情報などを発信していく。
山梨県は既にシンガポールにある日本食レストランの一角で特産品の販売を行っているが、独立した常設店舗を設けるのはマレーシアが初めて。検疫上の障壁が低く、輸出市場としても潜在性が高い点を考慮した。
26日に、駐マレーシア日本大使公邸で地元メディア関係者を対象に観光PRを行った後藤斎知事は「日本には四季がある。現在は桃が最盛期だが、まもなくブドウへと変わる。季節とともに移り変わる魅力を伝えるには常設の拠点が必須だと考えた」と開設の意義を説明した。桃、ブドウの次はカキなどが並ぶ予定だ。
■3年をめどに山梨文化浸透=知事
昨年の県知事選で初当選した後藤知事は、出馬時の公約で東南アジアに常設の「山梨モール」を設置し、山梨県産の農作物を販売することを掲げており、それを実現させた格好。同知事は「まず1年できちんとした評価を得たいが、『石の上にも3年』というように、そのぐらいやらないと観光振興につながらないのではないかと思う。3年をめどに常設店の運営をしたい」と語った。常設店での売れ行きは好調で、1週間前のプレオープン期間に桃とブドウは完売し、追加輸入を行ったという。
マレーシアには同県甲府市に本社のある菓子メーカーのシャトレーゼも進出しており、消費者の人気を集めている。大使公邸での観光PRイベントでは、同社が県産マスカットをふんだんに使って特別に製造したデザートを振る舞った。参加した30代の華人系マレーシア人女性は「今まで食べたことのあるマスカットより粒が大きくジューシー。甘みも強い」と興奮気味に話した。
山梨県はこのほか、KLの伊勢丹KLCC店で31日まで県産品を扱う物産展も開催する。県関係者によると、昨年の同県からマレーシアへの果物輸出は300万~500万円。また、15年に同県に宿泊したマレーシア人観光客は約2万5,000人に上る。