多額の現金を金融機関に預けずに自宅で保管する、いわゆる「タンス預金」。日本では金利の低下やペイオフのリスクを回避するため、富裕層でもタンス預金をおこなう人が多く、その預金総額は30兆円を超えるとみられている。しかし、このタンス預金は預金の資産価値を損なう危険性をはらんでいるという。ファイナンシャルプランナーの秋口千佳さんに詳しく聞いた。
■■今回のアドバイザー
えふぴ~癒し庵 代表 秋口千佳さん
1級ファイナンシャル・プランニング技能士。えふぴ~癒し庵を運営し、個人向けにFPに関する相談や開業支援、法人向けにFPの講演・セミナー講師として、京都、大阪、滋賀県など関西一円を中心に活動中。
■国に把握されにくい資産
秋口さん「昔、タンスの中に資産を隠していたことからその名がつき、今も各個人が手元に持っている現金のことをタンス預金と呼んでいます。金融機関に預けているならまだしも、日本経済に流通していないタンス預金は“死に金”と揶揄されることもあります。日本では現預金で自身の資産を確保する動きが根強く、株や債券、純金など、金融資産への投資に対する知識のなさも、タンス預金が増え続ける原因といえます。
たしかにタンス預金は、金融機関の破綻や引き出し限度額などの制限がないため、自由に資産を使うことが可能。また、金融機関に預けないため、マイナンバー制度の中でも預金額が国に把握されない、などのメリットがあるのは事実です」
■災害、盗難、インフレに弱いタンス預金
秋口さん「魅力的にも思えるタンス預金ですが、その実態はデメリットのほうが大きいです。なにより、タンス預金最大の欠点は盗難や災害による被害。当然ですが、タンス預金をしている高額所得者ほど、被害に遭った場合の損失は大きくなります。
また、国が把握することが難しいタンス預金は、節税対策になるという風説がありますが、相続税の対象になるのはプラス、マイナスに関わらず、原則被相続人の全財産。そのため、タンス預金もそのひとつとみなされ、資産として申告しなければ、法律違反になるので注意してください。
そして、今後、日本経済はインフレの時代に入るという見方があります。インフレによって、物価の上昇と通貨価値の下落がはじまれば、タンス預金の1万円は時間の経過とともに9999円、9995円と目減りしていくのです。対策としては、金融機関に預けて目減り分は金利で補てんしようとすること。さらに、投資で資産を運用すれば目減り率をさらに減少することができるのでオススメです」