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昨年は199人が移住 「山梨県に住みたい」はなぜ増えた?

 都心住民の“ヤマナシ人気”が上昇中だ。移住先としてである。NPO法人「ふるさと回帰支援センター」の「県別移住先希望ランキング」調査によると、山梨県は過去5年、8位→12位→15位→2位→1位(2014年)と推移。いつもは10位前後をウロウロしていたのに、2年前から俄然、注目度がアップした。そのワケは――。

「新宿から中央本線で山梨に向かうと、高尾付近からグッと緑が多くなります。笹子トンネルを抜けて甲府盆地が開けると、富士山が見えてきて、それこそ『ストン』と風景が切り替わる。田舎へのステップというか、都会から特急で90分ほどなのに違う国へ入ったかのよう。都会の雑踏での暮らしから解き放たれるような感覚が、より多くの人に分かってもらえるようになった結果だと思います」

 こう言うのは、“山梨押し”のひとり、倉田貴根さん。有楽町の交通会館にある「ふるさと回帰支援センター」内の山梨県ブースで、2年前から山梨暮らしの移住専門相談員として奮闘中だ。

■就職窓口設置で押し寄せた子育て世代

 人気急上昇の理由はこれだけではない。同センターでは「ほぼ毎月のように開く移住セミナーで認知度アップ」「就職窓口をセットにした相談体制」などを挙げる。たしかに、移住したくても、仕事が見つからないのでは決断できない。就職窓口の設置は大きなプラス材料に違いない。

「かつてはシニア世代の移住希望者が多かったのに、最近は30代や40代の子育て世代が家族で移住したいという相談が増えた。自然の中で自然に触れながら子供たちを育てたいと。同時にハローワーク担当者が就職相談にも乗るため、これも人気の理由でしょう。この場でスタートして2年、地元企業から『こんな人を探している』という情報も入るようになり、着々と態勢は強化できていると思います」(倉田相談員)

 つい先日は、県内の醸造会社から「英語が話せる人募集」の話があり、相談者の中からすぐに人を紹介できたという。

 農業を始めたい若者も増えてきた。ただ、素人がそう簡単に農作業はできない。そこで山梨県は、「農家民宿」が農業研修をセットにして受け入れ態勢を整える。2泊3日の研修を3~4回繰り返す方式で、徐々に互いを知る“お見合い研修”システムが好評だ。

 同ブースではパソコンで求人情報が検索できるほか、農業法人のパート募集パンフまであった。

「求人募集! 八ケ岳で農業しませんか! ※18歳以上。活動内容=農業生産活動全般。勤務場所=北杜市。勤務時間=8~17。待遇=16万6000円……」

 こんな感じだ。「通勤用自動車提供、住居費補助支援アリ」とも。都会生活は「NO」の若者なら、話を聞いてみたくなるかもしれない。

「空き家バンクの検索ほか、土地・住宅の売買、賃貸情報もそろっています。家賃補助や東京エリアで働く人へ家賃補助をする自治体もある。ですが、移住は山梨で暮らし、地元の人とつながりを持ち、なじめるかどうかが最大の問題。私は『付き合いが苦手の方は別荘を買って下さい』と勧めています」(倉田相談員)

 ごもっとも。郷に入っては郷に従え、なのだ。

 参考までに、同センターの相談件数(来所、電話、メール含む)と、移住者数(住民票を移した人)を付け加えておく。13年度=1742件で52人。14年度=2000件で199人。