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路線価 改正で課税対象者拡大の相続税対策に高い関心 マンション購入ブーム

 今年1月の相続税制改正後、初めてとなった1日公表の路線価。基礎控除の縮小により相続税の課税対象が広がったことに加え、相続税の算定基準となる路線価が上昇したことで、大都市圏などでは税理士事務所への相談件数が急増するなど相続への不安や節税対策への関心が高まっている。

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 「資産評価をいかに基礎控除額の枠内に抑えるかを考えた結果、思い切って賃貸物件を買うことにした」

 今年、都心に約2千万円のワンルームマンションを購入した東京都立川市の男性(61)はこう話す。

 税制改正により「5千万円+1千万円×法定相続人の数」で計算されていた基礎控除額は、「3千万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられた。

 男性の法定相続人は1人で、預金額は約5千万円。昨年までなら相続税の課税対象外だったが、改正により課税対象になった。

 相続税は土地分と建物分をそれぞれ資産評価して算出する。不動産購入は、路線価が時価より低い上、特例により評価額の減額を受けられるため代表的な節税策。男性は賃貸物件をもう1軒購入する予定という。

 不動産の中でも、大人数で土地を区分所有する大規模マンションは節税効果が高いとされる。住友不動産首都圏マンション事業部の田村大樹営業課長は「シニア世代を中心に、相続税対策で都心のマンションを購入する人は昨年より増えている」と話す。

 税理士法人レガシィ(東京)の試算によると、東京国税局管内(東京、神奈川、千葉、山梨)での相続税の課税対象者は、改正前の約1万6100人から、約3万4700人に2倍以上増える。

 同法人が想定した土地面積約160平方メートルの一戸建て所有者の相続モデルに基づく試算では、JR中央線立川駅や、JR総武線新小岩駅、都営三田線板橋本町駅、東急東横線大倉山駅の周辺では、改正前は相続税がかからなかったが、改正後は約300万円の相続税が生じるとしている。

 相続に関するコンサルティングを行う「夢相続」(東京)の曽根恵子代表は「これまでは家族が亡くなった後の相談が多かったが、改正が決まってからは生前対策の相談が多くなった」と話す。その上で「『相続税対策』といえば、何でも受け入れられてしまう雰囲気もあり、不必要な融資を受けたり、不動産を買わされたりしないよう注意が必要」としている。