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<山梨県立図書館>駅前に新築移転…明るい空間、来館者急増

 新築移転した山梨県立図書館(甲府市)の来館者が、2013年度は以前の6倍となる約91万人と急増し、都道府県立図書館としては全国2位に躍進して注目を集めている。14年度も約90万6000人と好調を維持。卒業式もできる500人収容のイベントスペースや交流ルームの併設など、市民ニーズをくみ取る形でにぎわい創出に努めたことが奏功しており、同館は「情報発信拠点として、全国トップクラスの施設に」と鼻息が荒い。【後藤豪】

 吹き抜け天井で開放感のある県立図書館は、特産のブドウの棚をイメージした鉄骨フレームのガラス壁面から日差しが降り注ぐ。紙が劣化するため、太陽光は書籍には天敵。しかし、薄暗かった旧館は入りづらいとの意見もあり、「人を呼び込む明るさにするため、ある程度妥協した」(同館)という。場所もJR甲府駅から約500メートル離れた官庁街近くから12年11月、利便性の高い同駅北口へ移った。

 移転に伴い、直木賞作家、阿刀田高さんが館長に就任し話題を呼んだ。ただ、最大の特徴は、専門学校の卒業式や地元企業の説明会などが開けるイベントスペースの設置で、年間を通じて出入りが絶えない施設に様変わりしたことにある。広さの異なる6室の交流ルームでは、ダンス講習や悩み相談会などが実施され、来館する若者らも増えた。

 日本図書館協会のデータによると、旧館時代の11年度の来館者は15万1097人で、全国の都道府県立図書館で下から3番目だった。しかし13年度は、トップの岡山県立図書館の105万1432人に次ぐ91万5452人。同年度の貸し出し点数も45万8664点に上り、旧館時代(11年度)の5倍以上と大幅に増えた。

 筑波大の池内淳准教授(公共図書館政策)は「明るく開放的で機能的な空間構成になるよう建物が工夫され、新しい時代の図書館を体現している。駅近くにあるのも珍しく、魅力の一つではないか」と話している。

 ファッションショーや芝居を館内で催したことのある奈良県立図書情報館総務企画課の乾聡一郎さん(53)は「(山梨の)さまざまな企画は刺激になる。参考にしたい」とエールを送っており、山梨県立図書館の斉藤秀(すぐる)副館長(59)は「単に本を借りる場所にとどまらず、生活の悩みや疑問に応えられる『問題解決図書館』を目指したい」と意気込んでいる。