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16年度税制改正議論始動 軽減税率など生活テーマ

 政府・与党は2016年度税制改正議論を始動する。与党の税制協議会が22日、生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」の制度設計の議論を再開。6月には政府の税制調査会が、専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」の見直しを含む所得税改革の具体的な議論を始める。法人税改革が主役だった15年度改正から一転、国民生活に直結する大がかりなテーマが主体となる。

 与党が軽減税率の協議を行うのは3カ月ぶり。今秋の最終案取りまとめに向け、本格的な議論に入る。税制改正作業は11月以降に行われるのが慣例だが、軽減税率は事業者の準備期間が必要で、目標とする17年度の導入には早期の合意が欠かせないからだ。

 焦点となる対象品目には8つの案があるが、効率的に協議を進めるため、まずは「酒類を除く飲食料品」「生鮮食品」「精米のみ」という3案を抽出。22日は品目を線引きする基準や効果、課題などについて詳細にわたり示す予定で、今後の協議のたたき台にする。

 軽減税率を適用すると、例えば生鮮食品では消費税率1%当たり1800億円の税収減になると試算されており、それをどう穴埋めするか。また、事業者が通常の税率と分けて経理処理する方法などが焦点になる。

 配偶者控除の見直しは、女性にとって公平で働きやすい制度に改め、若い世代や子育て世代に配慮して負担を軽減し、高所得者の負担を増やす方向で検討する。政府税調は昨年11月に5つの選択肢を取りまとめたが、軸になるのが夫婦世帯で所得から一定額の控除を認める「夫婦控除」の創設だ。ただ、この案は現行制度より減税になる。改正前後で税収額が変わらないようにするには、高所得者の控除見直しによる財源確保など諸控除を見直す必要がある。

 政府税調は昨年、配偶者控除に絞って議論してきたが、今年からは個人所得課税全体の見直しの議論に踏み込む。政府が6月末に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に、社会構造の変化などを踏まえた所得税改革の方向性が示される。中期的課題として相続税など資産課税の見直しも含めた議論になる。

 ビール系飲料にかかる酒税の税率格差の見直しも主要テーマだ。段階的に差を縮めて一本化を検討する。だが、税率を一本化し全体の税収が変わらないようにする場合、税率が安い発泡酒や第3のビールは増税になる。業界や消費者からの反発も予想され慎重に議論を進める。

 一方、法人税の見直しは15年度改正で大筋を固めた“裏年”に当たり、小粒になりそうだ。法人実効税率は14年度の34.62%から15、16年度で計3.29%引き下がることが決まっているが、目標の20%台には届いていない。下げ幅の上積みを図るため、年末に向けて特定の業界などの税負担を抑える政策減税の見直しなどで財源探しをどこまで詰められるかが課題になる。