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日本ワイン増産機運 消費1.8倍予測も 課題は原料収益性

 国産ブドウを原料に国内で製造する「日本ワイン」の振興に国が力を入れ始めている。ワイン全体の消費が国内で増える中、日本ワインの伸びしろもあると見込み、国内のブドウ産地の活性化を期待する。ただ、生食用ブドウと比べて収益性が低いなどの課題もあり、今後の生産拡大と農家所得の向上につなげられるかが課題だ。

 ワインは輸入が主流で、国産ワインは3割にとどまる。ただ、その国産ワインも原料は輸入の濃縮果汁というケースが多く、国産原料はわずか2割。国産原料を使って国内で製造した日本ワインは、ワイン出荷量全体の1割に満たない。

 一方、輸入品を含めたワイン全体の国内出荷量は近年増え続けている。2013年は36万キロリットルと10年前の1.5倍に増えた。日本ワインも、品質の高まりやワイナリーが地域の醸造用ブドウ利用を増やしていることなどを背景に増加傾向だ。長野、山梨といった主産地を抱える関東農政局は、今後も日本ワインの消費増が続き、今後10年間で現状の1.8倍に増えると予測する。

 これに呼応し産地でも醸造用ブドウの生産機運が高まっていることから同農政局は4月、日本ワインをテーマにしたシンポジウムを初めて開催。酒を所管する財務省や経済産業省の各出先機関も共催し、行政の縦割りを超え日本ワインを振興する姿勢をアピールした。ブドウ栽培やワイン醸造に新規参入した事例の報告や、独自の認証制度でワイン振興に取り組む山梨県甲州市の紹介があった。行政、生産者だけでなく消費者も含め定員を上回る400人が参加し盛り上がりを見せた。

 日本ワインの生産を拡大していく上で、果樹農家にとっての課題が収益性の低さだ。醸造用ブドウは1キロ当たり200~300円と生食用の数分の1。一方で、生食用に比べて圃場(ほじょう)管理コストは掛からない。このため、農水省は農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じた農地集積でコストダウンを進め、農家の収益確保を目指す。遊休桑園の再生などにも期待がある。

 ワインは6次産業化の事例としても期待が大きく、付加価値向上のメリットを農家に還元する地域の体制づくりも、取り組みを広げていく上で重要な鍵になりそうだ。
 国はその他、収穫までの未収益期間の経費を助成する事業や、ワイン製造施設の整備に農林漁業成長産業化ファンドの仕組みなど既存の支援策を紹介している。