無料相談受付中

国内住宅市場に反転の兆し、消費増税の影響が薄れるか?

 3月の新設住宅着工戸数は増加に転じ、消費増税前の駆け込み需要の反動減から持ち直した。足元でも回復の兆候が見られ、個人消費に比べれば見通しは明るい。今後賃上げの流れが定着し生活に余裕が生まれれば、住宅市場は伸びるだろう。

■1年余りを経て増大に転じる

 国土交通省が発表した3月の新設住宅着工戸数は6万9,887戸で、前年から0.7%増と13カ月ぶりにプラスへ転換。市場予想(1.9%減)も上回った。

 分譲住宅は前月に大規模マンション着工があった反動で4.9%減に陥り、注文住宅などの持家も1.4%減と14カ月連続で前年割れ。それでも、持家は昨年11月の29.3%減よりは下落幅が縮小し1桁台の悪化にとどまるなど、改良の方向ではある。また給与住宅が98.9%増と2カ月ぶりに拡大。貸家も今年1月の相続増税に伴う節税対策による投資が堅調で、4.6%増と9カ月ぶりに増加に転じた。

 地域別では近畿圏が3.0%減と7カ月連続で落ち込み、その他地方も2.9%減で13か月悪化が止まらないが、いずれも下げ幅は小さくなってきている。

 首都圏は5.2%増で2カ月連続増大し、中部圏も5.2%増で11カ月ぶりに押し上げられるなど、都市部を中心に増税から持ち直す動きが表れているようだ。

 足元の動きでも、季節調整値の年率換算で1.7%増と2カ月上向き続けており、その結果92万戸と前月同様90万戸台を維持。このように、住宅市場は停滞から脱却し切れてはいないものの、徐々に光明が見えてきたといえよう。

■消費増税の影響が薄れつつある

 昨年4月の消費増税以降家計は厳しい状況が続く。賃金は、名目では概ねプラスを確保しているが伸び率は低く、物価を除いた実質はマイナスから抜け出せていない。

 そのため消費や投資をする余裕はなく、特に日用品の購入ではない住宅投資は増税で大きく落ち込む。増税後1年間の名目値平均で、消費支出は0.8%減にとどまるが、住宅着工は9.9%減と1割も収縮。特に持家の着工減が最も長引き未だ反転できておらず、家計の多くが住宅購入に依然慎重なようだ。

 ちなみに、国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」によると、土地・建物の両方を所有したいと考える人は、2013年で77.0%にものぼる。つまり、約8割が持ち家を希望しているにも拘らず、まだ十分実現されていない状況なのだ。

 ただ前月に続いて、徐々に増税の影響も和らいできてはいる。住宅着工は、14年1月:12.3%増、2月:1.0%増、3月:2.9%減と、2月に駆け込み需要が落ち着き、3月は既に縮小に入っていた。それに合わせ、15年1月:13.0%減、2月:3.1%減、3月:0.7%増と、やはり2月に反動減も収まり、3月には好転した。

 ちなみに、昨年4月も3.3%減とマイナスだったため、次回4月も反動減がなくなり1ケタ程度のプラスを維持する可能性はある。

■生活改善・低金利・政策支援で市場回復へ

 今後は生活環境改善や低金利、政策支援などで、住宅市場は緩やかに回復するのではないか。雇用は拡大基調だ。完全失業率は3月も3.4%と低位推移。消費動向調査の雇用環境の意識は去年末から底上げが続く。

 上述の通り、賃金は客観的には依然戻っていないが、同調査の収入の増え方が3月も上向くなど、人々の意識には改善の兆しも見られる。この流れが続き雇用や賃金がさらに回復すると、住宅購入の余裕がより生まれる。

 金融緩和継続で住宅ローン金利も低水準。フラット35の最高金利は、追加緩和を決定した去年10月の2.28%から5月は2.08%へと低下。このため住宅ローンを組みやすい環境に変わりはない。また省エネ性能を持つ住宅の新築・リフォーム・購入にポイントを付与する住宅エコポイント制度といった後押し要因もある。

 増税の影響が薄れて家計も楽になり、政策支援が加わることで、住宅着工は緩やかに戻るだろう。