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「地域おこし協力隊」終了後に5人定住

 都市部の若者らが過疎地の自治体に移住し、最長3年間有給で地域活動に携わる「地域おこし協力隊」で、和歌山県内には制度の始まった2009年度からこれまで6市町に20人が参加し、活動を終えた11人のうち5人が地元に定住したことが、紀伊民報の調べで分かった。一度取り組んだ市町は、翌年度以降も続けて募集するなど制度を活用する一方、田辺西牟婁地方で隊員を採用した市町はなく、自治体間で温度差が見られる。

 地域おこし協力隊は、都市部の若者らが1~3年間、地方に移り住み、農林漁業や地域おこし、高齢者の生活支援などに携わる。仕事の内容は隊員を募集する自治体が地域の実情に応じて決めており、隊員の報酬や家賃、活動費などは、国が1人当たり年400万円を上限に、特別交付税を自治体に配分している。14年度からは、隊員が起業する場合には登記などの経費として最大100万円上乗せする。

 県内では高野町が09年度に2人を採用したのが始まりで、紀美野町、かつらぎ町、那智勝浦町、新宮市、日高川町が導入。現在は6市町で9人が活動している。

 既に任期を終えたり任期途中で活動を辞めたりしたのは11人で、このうち高野町で1人、かつらぎ町1人、那智勝浦町で2人がそれぞれ町内に定住した。紀美野町では1人が近隣自治体に定住し、その後も紀美野町で里山整備などの活動を続けている。

 “卒業”後の定住率がこれまでのところ100%の那智勝浦町では、隊員を臨時職員として雇用、隊員はIターン者の多い色川地区で暮らしながら活動している。

 地元住民や地区内のIターン者、区長を中心に組織した「色川地域振興推進委員会」が協力隊をサポートしている。

 これまで行ってきた業務内容は、高齢者に聞き取り調査して伝統文化や行事、風習などをまとめた「思い出冊子づくり」や、使われなくなりつつある小字や通称を地図に落とし込む作業など。業務を通して隊員が地域のさまざまな人と触れ合い、地域の状況を把握できるようにした。現在、現役の隊員が1人いるほか、近々東京から新たに1人、着任する予定だ。

 紀美野町の現役隊員の2人は、休校した小学校を活用したまちづくりや農家民泊、雑穀を利用した健康づくりなどに取り組んでいるが、いずれも今年の夏で3年の任期終了を迎える。「難しいのは任期を終えた後も、この地で生計を成り立たせていけるかどうか。行政としても何らかのサポートをしていきたい」と町の担当者。「今後20年、30年で人口が急減し自治体の消滅が危ぶまれる今、住民や行政が何をすべきかを真剣に考えなければならない。地域おこし協力隊の人とともに考え、実践していくことで、少しはコミュニティーが存続する可能性が生まれるのではないか」と話す。

 一方、隊員の採用実績がない田辺市は「Iターン者に来てもらう手法はいろいろあり、地域おこし協力隊はそのうちの一つ。市はいま集落支援員制度に力を入れており、高齢者の見守りや買い物サポート、有害鳥獣への対応をしている。その業務は、地域おこし協力隊と重なる部分があるので、これまで取り組んでこなかった」と説明する。

 総務省によると、13年度時点で、全国の318自治体(4府県と314市町村)で978人が現役の隊員として活動。最も多いのは北海道で168人、次いで長野県83人、山梨県と島根県各59人となっている。

 また、13年6月末までに任期を終えた隊員の56%が、活動した自治体やその周辺に定住したという。政府は今後3年間で、隊員数を3千人に増やす目標も掲げている。