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富士山会議がビジョンと戦略採択 来秋にも「保全報告書」 山梨

山梨、静岡両県は24日、富士山の保全管理について協議する「富士山世界文化遺産協議会」を静岡県沼津市の「プラサ・ヴェルデ」で開き、富士山に対する危機管理や来訪者対策などの各戦略とビジョンを採択した。今後は、この戦略を基に具体的施策を定めた「包括的保存管理計画」を策定し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が提出を求めている「保全状況報告書」を来年10月にもまとめる方針。

 この日は、山梨、静岡両県知事をはじめ、両県の自治体首長ら約100人が出席。これまで、有識者会議や各県の関係者会議で取り組んできた各戦略案とビジョン案について最終的な採決を行った。

 危機管理戦略では、今年9月に発生した御嶽山(おんたけさん)(長野、岐阜県)の噴火を踏まえ、予知された噴火への対応だけではなく、「突発的な噴火に対する登山者の安全の確保」が盛り込まれた。現在、山梨、静岡、神奈川3県が作成している具体的な避難方法を定めた「富士山火山広域避難計画」の結果を戦略に反映させる方針だ。

 また、来訪者管理戦略では、「望ましい富士登山の在り方」を実現するため、両県で登山道の収容力の研究を行い、3年をめどに1日当たりの登山者数の上限目標を設定。これまで実施してきたマイカー規制や、登山者からの入山料(富士山保全協力金)の徴収を継続し、富士山の環境保全と登山者の安全確保を図る。

 一方、ユネスコに提出する報告書の冒頭部分にあたる富士山に対するビジョンについては、富士山を「日本人の自然に対する信仰の在り方や日本に独特の芸術文化を育み、長い歴史の中で日本人の心の拠(よ)り所となってきた」とし、富士山を次世代に継承する過程で「地域社会の役割」の重要性を強調した。

 ユネスコは、富士山を世界文化遺産に登録する際、富士山が抱えるさまざまな環境問題を指摘し、平成28年2月までに保全対策をまとめた報告書を提出するよう求めている。このため、国が提出した包括的保存管理計画の見直しに向けて、国と山梨、静岡両県が連携して協議を重ねてきた。

 協議会終了後、山梨県の横内正明知事は「ユネスコの勧告を忠実に分析して高い水準のものができた」と評価。任期を終える来年2月以降の富士山の保全対策については、「静岡県とは大部分で意見が一致している。後任が誰になったとしても、それに従って着実に具体化を進めてくれると確信している」と話した。

 一方、静岡県の川勝平太知事も「採択にあたり異論が出ず、むしろ建設的な提言がなされたことを関係者に感謝したい。われわれがなしうる最善の報告書をユネスコに提出できるという感触を持った」と語った。