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進次郎氏が説く「アベノミクスの先の政策」

この人以上に人気がある政治家が、いまの日本に存在するのだろうか。衆院選が公示された12月2日、小泉進次郎氏の応援演説を聞いてみた。

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 実は2年前の衆院選でも、進次郎氏の「第一声」を取材した。早朝に地元で出陣式を済ませ、進次郎氏が向かったのは山梨1区。公認候補とはかねてから「第一番に応援する」と約束していたからだ。

 進次郎氏は甲府駅前に集まった聴衆に向かって甲州弁で挨拶をした後、向かいの公園に鎮座する武田信玄公の像に対しても「ご挨拶しなければ」と述べて笑いを誘った。

 その後に向かったのは八王子駅で、東京24区の萩生田光一氏の応援に入っている。萩生田氏と進次郎氏はともに青年局長を務めたという関係だ。進次郎氏が八王子に入ると、駅前の歩道は人であふれ、歩道橋の上はあまりの人数で落ちんばかりだった。あの黒だかりの人の山を、忘れることはできない。

■ 寒くなっても帰ろうとする人は皆無

 今回の衆院選は、やや落ち着いた様子に見えないわけではない。だが進次郎氏の人気は群を抜いている。

 午後4時から日本橋小網町で再選を目指す東京2区の辻清人氏の街宣が行われたが、進次郎氏をひとめ見ようと予定よりも早くから大勢が集まってきた。もちろん動員もかけられたにちがいない。

 「東京2区は主戦場だ」。元参院議員の保坂三蔵氏はこう述べた。辻氏の選挙事務所のすぐそばに東京証券取引所があり、株価の上昇はアベノミクスの成功の証拠のひとつと言われる。力が入るのも当然だ。

 この日は寒波が東日本を覆い、午後から気温が下がり始めた。それでも帰ろうとする人は皆無。それどころか、増える一方だった。誰もが進次郎氏を待っていた。30分ほどして車が到着し、進次郎氏は支持者にもみくちゃにされながら街宣車の上に上がった。

 「ここ中央区は国家戦略特区に指定されているのです」。進次郎氏は第2次安倍政権で国家戦略特区担当の内閣府政務官を務めているため、まず演説ではそのことに触れた。確かに、今年5月に決定した国家戦略特区法により、中央区は東京圏の中にある11の対象特区のひとつに指定されている。世界一のビジネス環境を整備して国際的なビジネスの拠点になることを目標とする特区だ。

 しかし同時に、東京一極中心ではいけないとも訴えた。「アメリカではニューヨークが経済・金融の中心、ワシントンDCが政治の中心、ハリウッドがエンターテインメントの中心と、役割分担している。ところが日本では東京が全ての中心で、全てが集中しているのです。しかし30年以内に70%以上の確立で首都直下型大地震が起きると言われている。パンデミック発生のリスクも高い。危険を分散させるためにも、もっと地方に分散しなくてはいけません」。

■ アベノミクスの先を考えなければならない

 ただし、単に地方に東京の一部を移設するだけではいけないとのこと。進次郎氏は「地方に一部をもっていっても、東京の魅力を損なわないようにしないといけない。そうすることで、地方に住みながら東京の便利さを享受できるという関係を作らなければならない。私はやはり横須賀に住みたいですから」と述べた。

 それは進次郎氏の次の言葉とリンクする。「私たちはアベノミクスの先を考えなければいけません」。それは人口が減少し経済成長が鈍る状況の下で、どのようにして豊かに暮らせる社会を作ることができるのかという問題だ。

 「そのためには、新しい成長モデルを構築し、政治のあり方も変えなくてはいけません。社会保障にしても、若者にツケを残さないようにしなくてはいけない。国際社会で平和を享受するためには、日本が変わらないといけないこともあります」

 33歳の進次郎氏にはたっぷりと時間がある。だからこそなおさら、将来に対する責任がその肩に重くのしかかる。しかしそれが負担になることはないだろう。進次郎氏は演説をこう言って締めくくったからだ。「一歩踏み出すことは希望だ。希望をもって納得できれば、どんな困難も解決できると思っています」。

 進次郎氏は、アベノミクスを批判したわけではない。しかし、あえて「アベノミクスの先」を語ることにより、自民党が描く長期的な政策プランをアピールし、"長い目でみた自民党への支持"を訴えたといえる。そして、自身が日本を背負って立つことも、同時にアピールしているようにみえた。

(http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141203-00054924-toyo-bus_all)