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「地方創生」に影落とす工場閉鎖 衆院解散、雇用対策「待ったなし」

衆院は21日午後の本会議で解散され、12月14日投開票の選挙戦に事実上突入した。安倍晋三首相が掲げる経済政策「アベノミクス」継続の是非が大きな争点となる。中でも、人口減少に歯止めをかけ、地方の成長活力を取り戻す「地方創生」に向けた各党の具体策が注目される。ただ製造業の工場閉鎖で数百人規模の雇用が一気になくなり、衰退に追い込まれる地域も少なくなく、国を挙げて取り組む地方創生に影を落としている。

 ◆受難の国内半導体

 甲府市の中心部から車で20分ほど行った釜無川沿いに工場が集まる地域がある。その一角にある半導体大手ルネサスエレクトロニクスの甲府事業所(山梨県甲斐市)が10月末にひっそりと閉鎖した。

 経営再建中のルネサスは昨年8月、甲府事業所の閉鎖を決めた。同事業所は県内最大の工場で、山梨県が誘致した第1号でもあった。従業員約600人のほか関連会社社員や派遣社員を含めると約1000人が働いていた。

 山梨県は、多くの雇用が失われ、地元経済に与える影響も大きいと判断。横内正明知事がルネサスの鶴丸哲哉社長を再三訪問し、工場を残すよう陳情してきたが聞き入れられず閉鎖に追い込まれた。

 今年春には、ベンチャー企業のグラス・ワン・テクノロジー(東京都千代田区)への売却話もあったが、条件面で折り合わなかった。最終的には約600人の従業員のうち約200人が配置転換となり、約400人が退職することになった。

 山梨県は退職者の雇用の受け皿を探すが、なかなか受け入れ先が見つからないのが実情だ。工場閉鎖で近隣の飲食店では売り上げの落ち込みが懸念され、甲斐市では「法人税や住民税が大幅に減る見込みだ」(市関係者)とうなだれる。

 ルネサスは円高に加え、海外企業との競争激化で財務基盤が悪化、産業革新機構からの出資を受け経営再建を進めている。生産・開発拠点の整理統合で2010年に4万6600人いた従業員は現在、2万4200人とほぼ半減。今後も拠点を削減する方針だ。

 日本の半導体産業は世界をリードしていたが、大型投資で製造に特化する台湾・韓国勢が台頭し衰退した。世界の潮流は設計と製造を分業する形態が主流となったが、日本企業は切り離せず凋落(ちょうらく)した。

 半導体メーカーでは、パナソニックが今年度中に岡山工場を閉鎖する。同社は4月、イスラエルのタワージャズに国内3工場を売却した。富士通も7月に三重工場と会津若松工場を分社化し、米国と台湾企業の出資を受けると発表したが、雇用が維持されるか懸念される。

 ◆円安でも海外移管

 アベノミクス効果で円高から円安に転じたが、海外に生産移管した企業が国内に戻る動きはまだ乏しい。一方で、今年になってホンダはメキシコ、日産自動車はブラジルに新工場を稼働させた。自動車メーカーは生産コストや為替リスクに加え、現地のニーズをいち早く取り込むため、むしろ海外生産移管を加速させている。

 こうした動きについて、経済産業省幹部は「工場の撤退で地方の元気がなくなっているのは理解しているが、行政としては何もできない」とつれない。グローバル競争のまっただ中にいる民間企業の経営には立ち入れないとのスタンスだ。だが地方創生には雇用の確保が不可欠。そのためには国内生産を一定程度維持する必要がある。

 石破茂地方創生担当相は21日、地方創生法成立を受け「人口減少、超高齢化社会という待ったなしの課題の打開に向け、大きな一歩を踏み出すものだ。国と地方が総力を挙げて地方創生を推進する」とコメント。地方創生という観点から、衆院選で勝利した新政権は製造業の国内生産について目を向ける必要がありそうだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141121-00000000-fsi-bus_all