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気象庁、火山灰の飛散予測改善へ 気象レーダー・衛星活用でより正確に

9月に噴火した御嶽山(長野・岐阜県)による火山灰は、隣県にまで降り注いだ。この火山灰の飛散予測の技術を改善しようと、気象庁が研究を進めている。これまでは、経験則に基づいた「目視」から導かれており、詳細な予測は困難だった。観測に測量的な基準を導入し、来春からは降灰量など防災に役立つ予報を公表する予定。さらに雨量をはかる気象レーダーや気象衛星といった“切り札”の活用も検討されている。

 ■印象と現実の差

 「噴煙の高さは視界不良のため不明です」「火山灰だけでなく小さな噴石も遠くまで飛散する可能性がある」。御嶽山が噴火した9月27日、気象庁火山課が注意を呼びかけた。同課は、火山灰は東に流れ長野、岐阜県のほか山梨、静岡県内にも降ると予報した。

 麓には降灰への不安も広がったが、御嶽山から約20キロ離れた旅館の経営者は「降ったといっても粉砂糖をわずかにまぶした程度。3日後にはやんでいた」と話す。具体的な降灰量や期間の予報がなく、噴火から1カ月後も灰が降っていると考える観光客も多く、一帯の宿泊施設は予約のキャンセルが絶えなかった。

 現在も毎日のように小規模な噴火を繰り返している鹿児島県の桜島では、降灰量によっては視界が数十メートルになるなど、日常生活に大きな影響を与えている。しかし現在の気象庁の降灰予報で提供する情報は、「噴火時刻」「噴煙高度」「予想される降灰の範囲」のみ。降灰量などがわかるよう改善を求める声は、以前から高まっていた。

 ■明確な基準導入

 こうした背景から気象庁は降灰予報の改善を模索。降灰量はおおむね噴煙の高さに比例するため、主に噴煙の観測方法の検討が進められている。

 これまでの噴煙の観測は、全国に4カ所ある火山監視・情報センターの担当者が火山付近にある遠望カメラの映像を見て、経験則から高さを判断していた。これをより正確にするために、ビルの高さの測定などで使われる3次元計測の基準を導入。複数の遠望カメラの映像や、カメラと山の距離などから計算して、噴煙の形状を割り出す。これにより、噴煙の立体像が明確になり、高さのほか風でどの方角に流れているかが分かるようになる。

 新しい予報方法は桜島での試験期間を経て、来年3月から運用が始まる。降灰量を降灰の厚さによって3階級で予報し、階級ごとに「窓を閉める」「マスクで防護する」「外出を控える」などといった防災上の注意を喚起する。

 ■切り札はレーダー

 3次元計測で予報は改善されるが、気象庁気象研究所(茨城県つくば市)ではさらなる手段の導入も検討している。雨量を観測するため全国に20基設置している気象レーダーの活用だ。レーダーを使えば反射した電波を分析することで降灰を計測できるため、雲が多くても噴煙を観測できる。さらに粒子の大きさも分かるため、噴煙の中にある小さな噴石の分布も分析できると期待される。

 10月に打ち上がった気象衛星「ひまわり8号」も注目されている。レーダーでは雨粒と灰の判別が正確にできないが、気象衛星が発する赤外線を含む多様な電磁波は、対象物の性質も判別できる。噴煙が雨雲の中に上がった場合でも噴煙の範囲を調べられる可能性があるという。気象庁火山課の担当者は「カメラの観測を基本にしながら、レーダーや衛星を補完的に活用したい。同時にそれぞれの技術を改善し、より正確な降灰予報を提供していく」と話している。

 ■民間も独自の取り組み

 民間気象会社ウェザーニューズ(千葉市美浜区)も独自の降灰予測に取り組んでいる。

 同社は、ゲリラ豪雨の観測に使っている独自の小型レーダー80基を所持しており、噴煙の観測にも活用している。カメラなどと併せて桜島や九州南部・霧島火山中央部に位置する新燃岳(しんもえだけ)などで火山灰の飛散を予測し、航空会社に提供している。御嶽山の噴火時は、付近にレーダーがなかったためカメラなどで噴煙を観察したが、今後噴火があれば、台車に乗せた移動型のレーダーを配置する。

 加えて重視しているのは、住んでいる地域の天候情報を同社のサイトに投稿する登録制の「ウェザーリポーター」。降灰についての写真やコメントなどを収集し、現場に即した情報を公開している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141109-00000514-san-soci