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上海自由貿易区が1周年 「苗床効果」が持続

中国の新たな改革開放のテストケース「中国(上海)自由貿易試験区」が29日に1周年を迎えた。「経済日報」が伝えた。

同試験区管理委員会の委員長を務める上海市の艾宝俊副市長の説明によると、1年間の改革実戦を通じて、同試験区は4つの制度刷新を推進し、重要な段階的成果を収めた。ネガティブリストを中核とする投資管理制度が構築され、貿易利便化を重点とする貿易監督管理制度が安定的に運営され、資本項目での人民元両替の自由化と金融サービス業の開放を目的とした金融イノベーション制度がおおよそ確立され、政府の職能転換を方向性とした進行中および事後における監督管理制度がおおよそ形成された。

▽金融の開放 企業の活力を十分に喚起

今年2月、同試験区に初めて進出したプライベート・エクイティ・ファンドの弘毅投資は、同試験区で初めてとなる国境を越えた株式投資を行い、1億8600万元(1元は約17.8円)を試験区外に投入し、蘇寧電器とともにオンラインテレビサービスのPPTVを買収した。申請の提出から登録完了まで、かかった時間はわずか5日間だった。それからまもなく、同試験区のプラットフォームを通じて、国境を越えた株式投資の第2弾が行われ、ハリウッドの新しいタイプの映画制作会社への投資が行われた。

同社の趙令歓総裁(社長)は、「制度のイノベーションという側面からみれば、企業は実質的な恩恵を受け、同試験区のプラットフォームを利用して業務のイノベーションを進めるという主導性も喚起された」と話す。

ますます多くの企業が改革の深化によって利益を受けており、同試験区の「苗床」で育てられた若い苗が移植されたことがわかる。上海市金融サービス弁公室の鄭楊室長は、「今年1~8月に、自由貿易で新たに行われた国境を越えた人民元建て決済の金額は1563億元、人民元建ての域外での貸出は174億3千万元、人民元建ての双方向の資金プール業務の金額は272億元、国境を越えた人民建て決済業務は4万8千件で金額は8億5千万元に上った。域外の融資・リース債権の審査認可や多国籍企業の外貨資金運営管理の取り消しといった改革措置は、中央政府の金融管理部門が全国で複製・普及を開始するよう通達を出した。

▽投資の管理 対外開放を拡大

人々が関心を寄せる外資系企業の投資に対する管理をみると、同試験区内では、ネガティブリストに掲載されていない分野での外資系企業による投資プロジェクトの認可制と企業の契約・規約の審査認可制がすべて登録制に改められるとともに、登録情報を複数部門で共有したり、登録機関が定期的にチェックしたりするなどの関連制度が構築された。8月末現在、試験区内で新たに設立された外資系企業で登録方式を通じて設立されたものの割合が90%を超えた。外資系企業の登録がその場で完了するようになり、これまで平均8日間だった審査認可にかかる時間が大幅に短縮された。

強みの顕在化は制度の成熟と改善に基づく。同試験区は2013年版ネガティブリストを改定し、今年6月に14年版ネガティブリストを発表した。外資系企業の投資参入特別管理措置が190項目から139項目に減少し、調整率は26.8%に上り、開放度と透明性が一層高まり、国内外の各方面から高い評価を受けた。艾副市長によると、世界で通行するルールに照らして、ネガティブリストの制定と改善を突出させ、外資系企業による投資や海外からの投資の管理と商事登記などの面で一連の制度のイノベーションを展開し、サービス産業の対外開放の取り組みを一層拡大するという。

上海市商務委員会の顧軍副委員長は、「大まかな統計によれば、1年間に同試験区での外資系企業による投資の対象分野が継続的に拡大しており、これまでに283件のプロジェクトが実施された。外資系企業の投資への意欲がほとばしり、新たに設立された外資系投資企業の数は昨年の10倍に増加した」と話す。

▽貿易の利便化 環境改善で効率アップ

上海税関によると、「先に試験区に入居し、後から税関に報告する」という同試験区で行われている制度が、8月18日に長江経済ベルトの税関特殊監督管理エリア51カ所でも展開されるようになり、9月18日からは全国の税関の監督管理エリアでの展開が始まった。

上海税関は、近く自由貿易試験区の4つの税関監督管理サービス制度をうち出す予定で、そうなれば税関は自由貿易試験区の23の制度をうち出したことになる。同試験区での輸入で通関にかかる平均時間は外部より41.3%少なく、輸出では36.8%少ない。

一連の改革措置に対し、多くの企業家が、改革は「これまでは思いも寄らなかった」メリットを運んできたと話す。英国イネオス社の上海法人・英力士上海有限公司の王雷董事長(会長)によると、外貨資金を運営管理に集中させるといった措置は、企業の資金の移動をより迅速にし、貿易コストを大幅に節減させ、資金の運用効率を大幅に高めるという。

▽進行中および事後における監督管理制度 職能の転換とサービスの改善

上海市浦東新区における外資の参入をめぐっては、3月26日に5種類の証明書を一括して取り扱う「五証一括処理」が実現し、外資系企業の必要書類の「一括処理」が設立の段階だけでなく、変更があった場合にも適用されることになった。カバー範囲は同試験区よりも大きい。これは、浦東新区の関連の総合的改革と自由貿易試験区建設が連動した初の改革のイノベーション措置だ。環付通市場営業販売コンサルティング(上海)有限公司中国エリアの陳国山・業務発展副総裁は、「証明書の手続きの全プロセスがわずか1週間ほどで済むようになった。想像を大きく超えている」と話す。一括処理では浦東新区の市場監督管理局、商務委員会、税務局から外資系企業の認可文書、営業許可証、組織機関コード証明書、税務登記省を受け取ることになり、陳副総裁は「望外の喜び」と表現する。

同試験区の「苗床」で育てられた若い苗が全国各地に根を下ろし始めている。同試験区は国の関連部門との交流を強化し、現在では複製可能で普及可能な改革措置が54項目あり、このうち21項目は全国や一部の地域に拡大される予定だ。また33項目は複製・普及に向けた土台が備わり、このほかの一連の改革イノベーション措置は現在、加速的に実践が進められている。

同試験区の実践は、突破的な政府の管理制度イノベーションであり、管理型の政府からサービス型の政府への重大な発想の転換であり、世界で通用するルールに合致したもので、外資系企業は政府がビジネス環境をさらに改善することに十分な信頼を抱いている。(編集KS)

「人民網日本語版」2014年9月30日